前立腺肥大症の初期症状は?頻尿・尿の勢い低下や受診目安を解説
「最近、尿の勢いが弱くなった」「夜中に何度もトイレへ起きる」「排尿後もすっきりしない」こうした変化を、年齢のせいだと片づけていませんか。
これらは前立腺肥大症の初期にみられるサインです。ただし同じ症状は、過活動膀胱や前立腺炎、尿道狭窄、前立腺がんでも起こります。症状の種類だけで原因を特定することはできません。
一方で、症状が軽い段階なら、すぐに薬や手術が必要になるとは限りません。生活習慣を見直しながら経過をみるという選択肢もあります。だからこそ、早めに状態を把握しておく意味があるわけです。
この記事では、前立腺肥大症の初期症状とその分類、進行の段階、放置した場合の影響、受診の目安、似た病気との違い、検査と治療までを解説します。
前立腺肥大症の初期症状は?頻尿と尿の出しにくさから始まる

前立腺は膀胱の出口で尿道を取り囲んでいる、男性だけにある臓器です。大きさはクルミほどで、40〜50歳頃を過ぎると加齢とともに少しずつ大きくなっていきます。
ただし、肥大していれば必ず症状が出るわけではありません。問題になるのは、症状が現れて生活に支障が生じているかどうかです。まずは、どんな症状から始まるのかを見ていきましょう。
症状は「排尿」「蓄尿」「排尿後」の3つに分けられる
下部尿路の症状は、尿を出すとき、ためるとき、出し終えたあとの3つに分類されます。この枠組みで見ると、自分の症状がどこに当てはまるかを整理しやすくなります。
分類 | 主な症状 |
排尿症状 | 尿の勢いが弱い/出始めるまでに時間がかかる/途中で途切れる/力まないと出ない |
蓄尿症状(尿をためにくい) | 昼間の頻尿/夜間頻尿/急に我慢できない尿意/間に合わずに漏れる |
排尿後症状 | 残尿感/排尿後にじわっと漏れる |
初期にまず気づかれやすいのは、トイレの回数の増加です。夜間に2〜3回起きるようになった、尿の勢いが落ちた、排尿後にすっきりしない。このあたりから始まる方が多くみられます。
尿の勢いが弱くなる・排尿に時間がかかる
尿道が圧迫されることで、尿の流れそのものが弱まります。勢いがない、尿線が細い、出始めるまで待つ、途中で何度も途切れる、腹圧をかけないと出ない。いずれも尿道の抵抗が強まったことによる変化です。
ただし尿の勢いは、前立腺の大きさだけで決まるわけではありません。膀胱が尿を押し出す力にも左右されるため、前立腺があまり大きくなくても症状が強い方もいれば、かなり肥大していても不便を感じない方もいます。
この感覚は主観に頼る部分が大きく、「勢いが悪い」と訴えて受診された方を検査すると、実際には保たれていたというケースも珍しくありません。尿流測定を行えば、感覚では分からない流れの状態を数値で確認できます。
頻尿・夜間頻尿・急に我慢できない尿意
前立腺肥大症は、尿を出しにくくするだけでなく膀胱を過敏にさせます。その結果、日中の頻尿、夜間頻尿、そして急に襲ってくる強い尿意が現れます。
夜間頻尿は、単にトイレが近いという問題にとどまりません。睡眠が細切れになれば日中の集中力は落ちますし、暗い中での移動は転倒のリスクを高めます。
もっとも、頻尿の原因は前立腺だけではありません。
水分やアルコールのとり方
糖尿病
睡眠障害
心臓や腎臓の病気
服用中の薬(利尿薬など)
回数だけを見て自己判断せず、1日の尿量や時間帯まで含めて評価する必要があります。排尿日誌をつけておくと、原因を絞り込む手がかりになります。
「残尿感」と「残尿」は別物です
排尿を終えたのに膀胱に尿が残っているように感じる残尿感。そして、トイレを出たあとに少量の尿が下着へ漏れる排尿後尿滴下。どちらも前立腺肥大症でよくみられる症状です。
ここで押さえておきたいのが、この2つは一致するとは限らないという点。残尿感はご本人が感じる自覚症状、残尿は実際に膀胱内に残っている尿の量を指します。
残尿感が強いのに測ってみるとほとんど残っていない方もいれば、自覚がまったくないのに200mL以上残っていた方もいます。感覚だけを頼りにすると状態を見誤るため、超音波による残尿測定で客観的に確かめることが重要です。
症状は3つの段階を経て進んでいく
前立腺肥大症の経過は、大きく3つの病期に分けて説明されます。ご自身がどのあたりにいるかを考える目安にしてください。
病期 | 名称 | 主な状態 |
第1期 | 膀胱刺激期 | 肥大が始まるが尿道への影響は小さい。頻尿傾向、尿の勢いの低下、残尿感が出はじめる |
第2期 | 残尿発生期 | 尿道の圧迫が進み、排尿後も膀胱に尿が残る。頻尿が強まり、我慢できずに漏れることも |
第3期 | 慢性尿閉期 | 多量の残尿が続き、尿閉やあふれるような尿漏れが起こる。腎機能への影響も生じうる |
一般に「初期症状」と呼ばれるのは、第1期から第2期のはじめにかけての変化です。ただし必ず順番どおりに進むわけではなく、進み方には個人差があります。
前立腺肥大症を放置するとどうなる?
症状はゆっくり進むため、不便な状態に体が慣れてしまい、受診が後回しになりがちです。しかし尿を出し切れない状態が続けば、膀胱そのものや、その上流にある腎臓へ負担がかかっていきます。
残尿が増え、膀胱の収縮力が落ちる
尿道の通りにくさが続くと、排尿後も膀胱内に尿が残るようになります。残尿が増えれば、そのぶん新たにためられる容量は減ります。少ししか尿が作られていない段階で尿意を感じるようになり、トイレの回数がさらに増えるという悪循環に入るわけです。
さらに長期化すると、膀胱の筋肉や神経に変化が生じ、尿を押し出す力そのものが弱まっていきます。やっかいなのは、この変化が起きてしまうと、あとから尿道の閉塞を解除しても排尿が十分に改善しない場合があるという点。早めに手を打つ意義はここにあります。
尿路感染症や膀胱結石を起こしやすくなる
膀胱に尿がとどまり続ける状態は、細菌が増えやすい環境でもあります。膀胱炎などの尿路感染症を繰り返したり、尿中の成分が結晶化して膀胱結石ができたりする土台になります。
膀胱結石ができると、排尿中に尿が急に止まる、血尿が出る、痛みを伴うといった症状が加わります。前立腺肥大症の症状と紛らわしいため、検査での確認が必要です。
腎機能に影響が及ぶことがある
尿の通過障害が強く、膀胱内の圧が高い状態や多量の残尿が長期間続くと、影響は上流の腎臓にまで及びます。腎臓に尿がたまる水腎症や、腎機能の低下を招く可能性があります。
初期の前立腺肥大症で、すぐに腎臓が悪くなることはありません。問題は、重い排尿障害を自覚しないまま放置してしまうケースです。腎機能の低下は自覚症状に乏しく、血液検査や超音波検査ではじめて分かることも少なくありません。
泌尿器科を受診したほうがよい目安

受診のタイミングに明確な線引きはありませんが、次のいずれかに当てはまるなら相談する価値があります。緊急度の高い順に整理しました。
状態 | 対応 |
尿意があるのに、まったく尿が出ない | 夜間・休日でも直ちに受診 |
血尿、発熱、悪寒、強い排尿時痛がある | その日のうちに受診 |
夜間頻尿で眠れない、外出を控えている | 早めに受診 |
尿の勢い低下や頻尿が続いている | 都合のよいタイミングで受診 |
症状が続く、生活に支障が出ているとき
症状が軽く感じられても、変化が数か月続いているなら相談してよいタイミングです。前立腺肥大症は進行性の病気であり、早い段階で状態を把握しておくほど選べる対応の幅も広がります。
夜間頻尿で睡眠が確保できない、トイレの場所が気になって外出をためらう、長距離移動が負担になる。こうした生活面での影響は、治療を始めるかどうかを判断する重要な材料です。前立腺肥大症の治療方針は検査数値だけで決まるものではなく、ご本人がどれだけ困っているかが同じくらい重視されます。我慢して過ごす必要はありません。
血尿・発熱・排尿時痛があるとき
目で見て分かる血尿、発熱や悪寒、排尿時の強い痛み。これらがある場合は、前立腺炎、腎盂腎炎、膀胱炎、尿路結石、腫瘍など、前立腺肥大症以外の可能性も考える必要があります。
とりわけ排尿症状を伴う発熱は、尿路感染症が重症化しているサインかもしれません。市販薬で様子をみるのではなく、早めに受診してください。症状が一度おさまっても、原因が消えたとは限りません。
高熱、強い悪寒、ぐったりして動けないといった全身状態の悪化がある場合は、時間帯を問わず医療機関へご連絡ください。
尿がまったく出ないとき(急性尿閉)
強い尿意と下腹部の張りがあるのに、尿が一滴も出ない。この状態を急性尿閉といいます。前立腺肥大症のある方では、次のようなことがきっかけになります。
飲酒
長時間の座位
一部の風邪薬・鼻炎薬・咳止め薬の服用
便秘
体の冷え
急性尿閉は、初期の「出にくさ」とはまったく次元の異なる状態です。カテーテルで膀胱内の尿を排出する緊急処置が必要で、夜間や休日であっても速やかな受診を要します。
注意していただきたいのが、少量ずつ漏れているケース。膀胱にたまりすぎた尿があふれ出ているだけで、実際には大量の残尿を抱えている場合があります。「少しは出ているから大丈夫」という判断は禁物です。
排尿の変化が気になる方は、市川妙典おがわ泌尿器科・内科へご相談ください。症状の内容と生活への影響をうかがったうえで、必要な検査をご提案します。
前立腺肥大症と似た症状を起こす病気
尿の勢い低下、頻尿、残尿感は前立腺肥大症の代表的な症状ですが、ほかの病気でも同じように現れます。しかも、前立腺肥大症と別の病気が同時に存在することも珍しくありません。
病期 | 特徴 | 見分けるための検査 |
前立腺がん | 早期は無症状。進行すると排尿困難や血尿 | PSA検査・直腸診・MRI・生検 |
過活動膀胱 | 急な強い尿意と頻尿が中心。尿の勢いは保たれることも | 問診、排尿日誌、残尿測定 |
神経因性膀胱 | 脳卒中・パーキンソン病・糖尿病などの持病が背景に | 問診(既往歴)・残尿測定・尿流測定 |
前立腺炎・尿路感染症 | 発熱や痛みを伴うことが多い | 尿検査・血液検査 |
尿道狭窄 | 尿道の手術・外傷・炎症の既往が手がかり | 尿流測定・内視鏡・造影検査 |
膀胱結石 | 排尿中の急な途切れ・体位で出方が変わる・血尿 | 超音波検査・内視鏡 |
前立腺がん
前立腺肥大症と前立腺がんは、まったく別の病気です。前立腺肥大症ががんに変化することはありません。ただし、両者が同じ人に併存することはあります。
早期の前立腺がんはほとんど自覚症状を伴わず、進行してはじめて尿の出にくさや血尿が現れます。つまり、排尿症状の有無でがんの可能性を判断することはできません。年齢や家族歴を踏まえ、必要に応じてPSA検査、直腸診、画像検査を行って評価します。
前立腺肥大症と診断されている方も、PSAの推移は継続して確認していくことになります。
過活動膀胱・神経因性膀胱
過活動膀胱は、膀胱に十分な尿がたまる前に強い尿意が生じる状態です。頻尿や、我慢しきれずに漏れてしまう切迫性尿失禁につながります。前立腺肥大症に伴って膀胱が過敏になることもあり、両者が重なっているケースは実際によくみられます。
神経因性膀胱は、膀胱や尿道をコントロールする神経がうまく働かなくなった状態を指します。背景にあるのは、脳卒中、パーキンソン病、脊髄の病気、糖尿病など。尿が近くなるだけでなく、膀胱の収縮が弱まって残尿が増えるパターンもあります。
いずれも、持病や手術歴を含めた問診と、残尿測定による客観的な評価が欠かせません。
前立腺炎・尿道狭窄・膀胱結石
前立腺炎や尿路感染症でも、頻尿や排尿しにくさは現れます。発熱や痛みを伴うかどうかが手がかりになるものの、症状だけで確実に区別することはできません。慢性前立腺炎では高熱が出ず、会陰部の不快感や排尿後の違和感が続くこともあります。
尿道狭窄は、尿道の一部が狭くなって尿の通りを妨げる病気です。過去の尿道の手術や処置、外傷、炎症の既往が手がかりになります。尿の勢いが弱まる点は前立腺肥大症と共通していますが、狭くなっている場所も治療法も異なります。
膀胱結石では、排尿中に尿が急に途切れる、体の向きによって出方が変わるといった症状が加わります。いずれも超音波検査や内視鏡で確認します。
医療機関で行う主な検査
泌尿器科では、症状の内容と生活への影響を聞き取ったうえで、尿・前立腺・排尿機能をそれぞれ調べていきます。すべてを全員に行うわけではなく、年齢、持病、症状、服用中の薬に応じて組み合わせます。
問診・IPSS(国際前立腺症状スコア)
問診では、尿の勢い、排尿回数、夜間頻尿、残尿感、尿漏れといった症状に加え、始まった時期と生活への支障をうかがいます。水分やアルコールのとり方、便秘の有無、糖尿病や神経疾患の既往、手術歴、処方薬・市販薬の内容も重要な情報です。
症状の程度を客観化するために用いられるのが、IPSS(国際前立腺症状スコア)。7つの症状に関する質問と、1つのQOL(生活の質)に関する質問で構成され、合計点によって重症度を判定します。
スコア | 軽症 | 中等症 | 重症 |
IPSS(0〜35点) | 0〜7点 | 8〜19点 | 20〜35点 |
QOLスコア(0〜6点) | 0〜1点 | 2〜4点 | 5〜6点 |
世界共通の指標のため、治療の前後で点数を比べれば効果を数値で確認できます。必要に応じて排尿日誌も併用します。
尿検査・PSA検査・直腸診
尿検査では、血尿や尿路感染、尿糖の有無を確認します。
PSA検査は前立腺がんを見つける手がかりとなる血液検査です。ただし前立腺肥大症や前立腺炎でも数値は上がるため、PSAだけで病気を確定することはできません。
直腸診は、肛門から指を入れて前立腺に直接触れ、大きさ・硬さ・表面の状態を確かめる検査です。正常な前立腺は消しゴムのような弾力ですが、がんでは石のように硬く触れることがあります。これら3つはそれぞれ目的が異なり、がんや感染症を見落とさないためにも組み合わせて行われます。
超音波検査・残尿測定・尿流測定
超音波検査では、前立腺の大きさや形、膀胱の状態を確認します。必要に応じて腎臓まで観察し、水腎症の有無も調べます。前立腺の体積は、20mL未満なら軽症、50mL未満で中等症、50mL以上で重症という区分が用いられます。
残尿測定は、排尿直後に膀胱内へ残っている尿量を測る検査。前述のとおり、残尿感という自覚とは別に、実際の残量を客観的に把握できます。
尿流測定は、専用の便器型の機器に排尿していただき、尿量・排尿時間・勢いを記録する検査です。最大尿流率の目安は次のとおりです。
最大尿流率 | 評価 |
15mL/秒以上 | 正常 |
10〜15mL/秒 | 軽症 |
5〜10mL/秒 | 中等症 |
5mL/秒未満 | 重症 |
この検査には一定量の尿がたまっている必要があり、一般に150mL程度以上が目安とされます。その日の体調にも左右されるため、単独ではなく複数の検査結果と合わせて評価します。
前立腺肥大症の主な治療

治療方針は、症状の強さ、残尿量、前立腺の大きさ、合併症の有無、そして生活への影響を踏まえて決まります。大きく分けると次の3つです。
治療 | 主な対象 | 目的 |
経過観察・生活習慣の見直し | 症状が軽く、残尿や腎機能への影響がない方 | 悪化を防ぎながら様子をみる |
薬物療法 | 症状が中等症以上で、生活に支障がある方 | 尿道の緊張をゆるめる/前立腺を縮小させる |
手術・低侵襲治療 | 薬で改善しない、尿閉を繰り返す、合併症がある方 | 肥大した組織を取り除き、尿道を広げる |
経過観察・生活習慣の見直し
症状が軽く、残尿や腎機能への影響がなければ、定期的に状態を確認しながら経過をみるという選択肢があります。すぐに薬を始めなければならないわけではありません。
日常でできる工夫としては、次のようなものが挙げられます。
夕方以降の水分量を調整する
アルコールやカフェインをとりすぎない
便秘を防ぐ
長時間の座りっぱなしを避ける
体を冷やしすぎない(寒い時期に症状が強まる方は特に)
ただし、水分を極端に減らすのは逆効果です。脱水や尿路感染症を招くおそれがあるため、自己判断で厳しく制限しないでください。また、一部の風邪薬や鼻炎薬には尿を出しにくくする成分が含まれています。服用中の薬は、処方薬か市販薬かを問わず医師や薬剤師にお伝えください。
薬物療法
前立腺肥大症の薬は、はたらき方によっていくつかの種類に分かれます。
種類 | 働き | 主な注意点 |
α1遮断薬 | 前立腺や尿道の緊張をゆるめ、尿を出しやすくする | 立ちくらみ、血圧低下、射精への影響 |
PDE5阻害薬 | 血流を改善し、平滑筋をゆるめて排尿症状を和らげる | 特定の心臓の薬との併用不可 |
5α還元酵素阻害薬 | 時間をかけて前立腺そのものを縮小させる | 効果まで数か月。PSA値を下げる |
膀胱の過活動を抑える薬 | 頻尿や急な尿意をやわらげる | 残尿が増えないか確認しながら使用 |
前立腺が大きい方には、5α還元酵素阻害薬が検討されます。ここで知っておいていただきたいのが、この薬はPSA値をおよそ半分まで下げるという点。服用していることを伝えずにPSAの数値だけを見ると、実際より低く評価されてしまいます。前立腺がん検診を受ける際は、必ず服用中であることをお伝えください。
効果が思わしくないとき、体調に変化が出たときは、自己判断で中止せずご相談ください。薬の種類を変える、量を調整するなど、対応の選択肢があります。
手術・低侵襲治療
薬で十分な改善が得られない場合や、尿閉を繰り返す、膀胱結石ができた、尿路感染症を繰り返す、腎機能への影響が出ているといった状況では手術を検討します。
尿道から器具を挿入して肥大した組織を切除・核出する経尿道的手術が中心で、代表的なものにTURP(経尿道的前立腺切除術)やHoLEP(ホルミウムレーザー前立腺核出術)があります。
近年は、体への負担がより少ない選択肢も広がってきました。小さなインプラントで肥大した組織を持ち上げて尿道を確保する前立腺吊り上げ術や、水蒸気の熱で組織を縮小させる治療などです。いずれも適応となる条件があり、すべての医療機関で受けられるわけではありません。効果の程度、再治療が必要になる可能性、出血や排尿機能・性機能への影響について説明を受けたうえで、ご自身に合う方法を選んでいくことになります。
前立腺肥大症の初期症状に関するよくある質問
何歳くらいから注意したほうがよいですか?
前立腺の組織的な肥大は30歳代から始まり、加齢とともに増えていきます。症状が現れて治療の対象となるのは50歳以降が中心で、60歳代で約6%、70歳代で約12%という報告があります。50歳を過ぎて排尿の変化を感じたら、一度確認しておくとよいでしょう。
前立腺肥大症は自然に治りますか?
自然に元の大きさへ戻ることは期待できません。前立腺肥大症は進行性の病気です。ただし、症状が軽ければ生活習慣の見直しで不便が和らぐ場合はありますし、すべての方が重症化するわけでもありません。放置ではなく、経過をみながら付き合っていくという考え方が現実的です。
市販薬やサプリメントで様子をみてもよいですか?
まず原因を確かめることをおすすめします。症状が似ていても、過活動膀胱や尿道狭窄、前立腺がんなど対応の異なる病気が隠れている可能性があるためです。特に市販の風邪薬や鼻炎薬には尿を出しにくくする成分が含まれるものがあり、かえって症状を悪化させるおそれがあります。
まとめ | 初期症状に気づいたら、我慢せず泌尿器科へ
前立腺肥大症の初期には、尿の勢いの低下や排尿までの時間の延長といった排尿症状、昼間・夜間の頻尿や急な尿意といった蓄尿症状、そして残尿感や排尿後の尿漏れといった排尿後症状が現れます。ただし、これらは過活動膀胱、前立腺炎、尿道狭窄、前立腺がんでも起こるため、症状だけで原因を決めつけないことが大切です。
放置して残尿が増えると、膀胱の収縮力の低下、尿路感染症、膀胱結石、さらには腎機能への影響につながる可能性があります。一方で、早い段階なら経過観察という選択肢もあり、選べる対応の幅は広くなります。前立腺肥大症の治療方針は検査数値だけで決まるものではなく、ご本人がどれだけ困っているかが同じくらい重視される点も、覚えておいていただければと思います。
なお、尿意があるのに尿がまったく出ない急性尿閉は緊急事態です。夜間・休日を問わず、直ちに受診してください。
市川妙典おがわ泌尿器科・内科では、症状の内容と生活への影響をうかがったうえで、必要な検査と今後の進め方をご提案します。「年のせいだから」と我慢せず、まずはお気軽にご相談ください。
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